私が靴を企画することにおいて、最も影響を受けた人物の一人、そして友人の一人であったRiccardo Bestetti(リカルド・ベステッティ)氏が昨日お亡くなりになりました。哀悼の意を表すると共に、心よりお悔やみ申し上げます。
氏の靴は細部まで細かい作りであったかと言えば答えはノーです。しかし抜群の履き心地と、その独創性、雰囲気において他を圧倒する存在感があったのは紛れもない事実です。多くの靴職人を見てきましたが、彼ほど一目で誰の靴か分かる靴職人を見たことがありません。履く人が靴の個性に負けてしまいかねないほど、彼の靴は彼の世界観が色濃く出たものでした。まさに鬼才と言う名が相応しい名職人でした。
今回は書き溜めておいた連作『私と世界の靴』のリカルド編をお送りいたします。
明るく愛嬌満点だった氏の為に、敢えて文章等は最初に書いたまま掲載させていただきます。
それではご覧ください。
こんにちは。。。BROSENTの清水です。
今回はイタリアのリカルド・ベステッティです。
変わった経歴を持つ靴職人で、業界では知る人ぞ知る個性派職人です。
興味があったらお付き合いください。
本間『リカルド・ベステッティって清水さんとこと取引があったから知ってますけど、それほど有名じゃないですよね?世界的にはどうなんですか?』
清水『やっぱり一般的にはそれほど有名じゃないんじゃないかな?ビスポークなんて誰もが履くわけじゃないし。。。でも、ヨーロッパのビスポーク系の職人さんと話すと大体『ハイハイ』ってなるから業界の中ではある程度名前は通ってると思うぞ』
本間『へ~』
本間『やっぱりかっこ良いですね~』
清水『左の好みだろ?』
本間『ドストライクです!』
清水『リカルドは元々ウェスタンブーツのコレクターで、アメリカのウェスタンブーツの職人に靴作りの基本を教わったらしいんだ。だから普通のドレス靴の職人さんが作る靴とやり方とか雰囲気が全然違う。それが良い意味で凄い個性になってると思う』
本間『確かにどこの靴にも似てないですよね?で、そもそも何で付き合い始めたんですか?』
清水『ミラノで行われてるMICAM(ミカム)って言う靴の展示会に毎回行ってたんだけど、ホテルの近くで夕飯食べて帰る途中に凄い靴がディスプレーしてある店をたまたま発見したんだ』
本間『それがリカルド・ベステッティだったと?』
清水『いやその時は『かっけ~!欲っし~』って思っただけ』
本間『え?』
清水『そうなのよ、ホント。で、2年位経ったのかな?俺MICAM以外にも個人がやってる展示会にも行ってて、そこにその靴がたまたまあったんだ!「あれだ!」ってすぐに分かった!』
本間『それで始めたと。運命的ですね~』
清水『そう。一目ぼれだったからね、俺。で、早速アポとってお店に行ってみた訳』
本間『動き早いですね~!』
清水『若かったからな(-_-;)。お店でうちはこういう店で、こちらの靴は素晴らしい、是非やりたい!って口説いて、その場でOK取ったんだ。しかもオリジナルラストで!』
本間『いきなり行ってオリジナルラストですか!図々しいですね~』
清水『ま、まぁな。。。俺もあんなにすんなり決まるとは思わなかったよ(;^_^A』
清水『取引が始まって数シーズン経った頃、ビジェバノに工場借りたから見に来ないか?ってお誘いがあってさ。ビジェバノってミラノから電車で小一時間のところにあって、靴を作るための機械を製造する会社が多いところなんだって。確かにヨーロッパの靴メーカーの工場に行くと機械に“VIGEVANO”って書いてあるのをよく見るわ。で、便利だってってんでそこにしたって言ってたな』
本間『ふ~ん』
本間『出たセピア!』
清水『初めて読んだ方が分からないリアクションするな!説明すると、この頃現在でも趣味であるカメラに凝り始めた頃でして、セピアとかモノクロとかにはまってたんです。。。』
本間『まぁそれは良いとして結構広そうですね』
清水『そうだな。小さめの体育館位あるから一人でやるには大きいわ』
本間『バイク好きなんですか?』
清水『大好きだよ。工場の一角を「俺のバイクミュージアムにする」って息巻いてたくらいだから』
本間『儲かるんですね。。。』
清水『日本よりヨーロッパの方が職人さんに対する扱いは良いと思う。色々な面で。。。』
本間『そうなんだ』
本間『凄いの出てきましたね~!』
清水『基本ビスポーク屋さんだからね。「こう言うの作って欲しい」ってオーダーが入ったら手持ちでない場合は探して買うって。にしてもかっこ良いよな~。白のアリゲーターって言ってたぜ、たしかこれ。クロコじゃないぜ。幾らするんだ、いったい?』
本間『エキゾチック好きにはたまらんすね~』
本間『また木型の保管がアバウトですね~』
清水『確かにな。でも顧客は凄いぞ!ロロピアーナの社長さんがいたと思えば、キーン・エトロがあったり。。。様々なジャンルの大物の名前が書いてあるラストが沢山あった。因みに俺のもあるぞ!トンマーゾって名前で!( ̄ー ̄)ニヤリ』
本間『そう言えば何足か持ってますよね?あれビスポークなんですか?』
清水『まぁな。3足。。。いや、4足か?全部ビスポーク』
本間『へ~、良いな~、ビスポーク』
清水『ビスポークって言ったって、いきなりはピッタリ来ないことが多いんだぜ。最初の数足はお試し料みたいなもんだ』
本間『そうなんだ。清水さんのも?』
清水『最初の1足はちょっと大きかったな。気が向いたらやるよ、今度』
本間『マジっすか!?』
清水『しっかり働いたらな』
本間『頑張ります!』
本間『いや~、やっぱり良い物は良いですね?如何でしたか?いつも「リカルドの靴の履き心地は半端じゃない」と清水が言っているんですが、BROSENTの靴はその清水が「限りなく近づけた」と言っています。是非一度足入れ私に来て下さいね!ではまた次回!』
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